死亡した時点で故人の「遺産」となる
★要点
金融機関には、名義人の死亡を知った時点から、その預貯金の口座を停止する義務があります。これは、法律上、故人の銀行預金や郵便貯金は、死亡の時点から遺産として相続の対象となるからです。
その結果、該当する口座の取り扱いがコンピュータによりロックされ、窓口でもキャッシュカードでも引き出せなくなります。預貯金の凍結が行なわれるわけです。
しかし、人の死はほとんどの場合、予期せぬ出来事で、それに伴って行なわれる葬式の費用を前もって準備しておくことはむずかしいものです。したがって、その費用について郵便局や銀行に申し出ると、窓口で引き出しに応じてくれる場合もあります。
この場合、口座の名義人に代わって家族などの名義人以外の人が引き出すことになるため、金融機関によっては書類や保証人などが必要なこともあります。
必要な書類は、おおむね次のとおりです。
銀行の場合
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 故人の戸籍謄本または除籍謄本・原戸籍謄本(法定相続人の範囲がわかるもの)
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 支払い目的がある場合は見積書(葬儀費用見積書など)
手続きに出向くとき代表者は、実印、預金通帳、通帳の届け出印、キャッシュカードなどを持参します。
郵便局の場合
基本的には認めないようですが、次のような書類があれば認める場合もあるようです。
- 故人の戸籍謄本または除籍謄本・原戸籍謄本(法定相続人の範囲がわかるもの)
- 法定相続人の「同意書」。用紙は郵便局にあり、相続人全員が実印による署名捺印をします。印鑑証明書も必要です。名義を書き換えることになるので、その通帳の残高すべてが自由になります。ただし、事務センターで処理するので7日間程度かかります。
手続きに出向く代表者は、印鑑(認め印でも可)と本人を証明するもの(運転免許証・健康保険証など)、預金通帳、通帳の届け出印、キャッシュカードなどを持参します。
引き出し限度額がある
引き出す金額には限度があり、通常の場合、150万円ぐらいとなっていました。しかし、今日では基本的にはこうした対応もほとんど行なわれなくなりました。
本来、凍結された預貯金から現金を引き出すときには、故人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明、遺産分割協議書を添えてその金融機関で手続きを行ないます。
ですから、遺産相続について正式に決まっていなければならないし、凍結された預貯金の口座を引き継ぐ人も具体的に決まっていなければならないことになります。こうした状態になるには、数カ月、場合によっては1年以上かかることもあるでしょう。